松浦俊介Top「コラム」ダイジェスト>平成18年6月28日(水)

自治体の倒産



10日ほど前に出た夕張市の倒産ニュース、
下記、共同通信記事

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夕張市が再建団体申請へ 巨額負債で自主再建断念

 深刻な財政状況に陥っている北海道夕張市の後藤健二市長が、自主再建の道を断念し国に財政再建団体の指定を申請する意向を固めたことが17日、分かった。
 市で最終的な決定をした上で、20日から始まる市議会で正式に表明、国に申請する。再建団体に指定されると支出に制限が設けられるなど、事実上国の厳しい管理下で市政運営を行うことになる。
 再建団体に指定されれば、福岡県の旧赤池町(現福智町)が1992年に指定されて以来。自主再建を模索したが、財政危機が明らかになり金融機関からの融資に支障が予想されることや、北海道が再建団体申請を促したことで断念した。
 関係者によると、後藤市長は「自主再建ではこれまでと同じことを繰り返すことになる」などと述べた。
(共同通信) - 6月17日21時17分更新

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財政再建団体に転落するのは、全国で14年ぶりだそうだが、
夕張市は氷山の一角で今後、同じように再建団体になるであろう
予備軍が多数あるといわれている。

平成の大合併は、7年前に兵庫県篠山市から始まったけど、
平成の自治体倒産が夕張市から始まるのかもしれない。

夕張市は何がダメポだったのだ?

(つづく)

■2006/06/29 (木) 自治体の倒産(2)

北海道夕張市は、昔は炭坑の街として、
現在は、夕張メロンで有名だ。

夕張市は、北海道のほぼ中央に位置する。
明治23年(1890年)に夕張炭山が開坑し、
大正9年(1920年)の第一回国勢調査で人口51,064人、
昭和35年には116,908人と最多人口となるも、
昭和40年代に入り、次々と閉山、
平成17年3月31日で13,615人だ。

最盛期の1/10くらいになってしまった。
市といえどももう町村レベルだ。

13,000人というと旧蒲原町くらいの人口である。

話はちょっと変わるが、
夕張市のホームページで市の歴史を見ると
何度も炭坑でガス爆発事故などが起きている。

一番多い犠牲者が
大正3年(1914年)に若鍋第二斜坑のガス爆発で死者423名。
最も最近で昭和60年(1985年)三菱南大夕張炭鉱のガス爆発事故で
死者62名。
この事故は何となく覚えている。
炭坑での労働というのは死と隣り合わせの仕事で過酷であり、
爆発事故ともなれば悲惨この上ない。

夕張は一時は大小24の鉱山があったが、
平成2年(1990年)に事故を起こした三菱南大夕張炭鉱の閉山をもって
「炭鉱の街夕張」としての歴史に幕を閉じた。

先週、企画財政課へ行って夕張市の平成16年度の普通会計の
決算状況を調べた。
まず驚いたのが歳出合計が193億円!!

清水町が80億円、人口32,000人で一人あたり25万7千円。
夕張市は、142万1千円で5倍以上。
ほぼ同じくらいの人口の旧蒲原町が47億円だから、
それと比べても4倍にもなる。

歳出のうち、「投資・出資金・貸付金」の項目が92億円もある。
これだけで清水町の決算を越える。
「投資的経費」が11億円。

経常収支比率は、116%。
財政力指数が0.22。
地方債残高137億円。
公債費比率20.5%。
貯金である財政調整基金が610万円。
もうほとんど無いも同然。

歳入のうち地方税が10億円。
地方交付税が46億円。
一般財源の合計が59億円。

夕張市の議会だよりから3月議会に行われた補正予算で
平成17年度分の予算総額を見た。
一般会計148億円、
国民健康保険事業会計が30億円、
その他、特別会計が8つあるが、
中でも目を見張るのが観光事業会計130億円。

怪しい、怪しい特別会計だ。
国民健康保険事業会計は、平成16年度決算で実質収支
マイナス8億1千万円である。

(さらにつづく)

■2006/07/01 (土) 自治体の倒産(3)

夕張市の負債額は、632億4千万円に確定した。

そのうち一時借入金が288億1千万円、
地方債などの長期借入金が261億7千万円、
公営事業向けなどの債務負担行為が82億6千万円。

一時借入金は、年度中で現金が不足している時に、
年度末までに入ってくる見込みの金額だけ金融機関から
一時的にお金を借りてやりくりする。
借りたお金は年度内に返済しなければならない。

夕張市の場合、特別会計の不足分を一般会計からの
貸付金で穴埋めし、その貸付金の財源を一時借入金で
賄っていたようだ。

また、さらに悪質なことに決算の残務処理期間である
4月1日から5月末までの間に、新たな資金を借り入れ、
前年度に借りた分を返済し、その上で
新年度分の財源不足を借り入れていたようだ。

会計間の貸し借りと年度を跨いだ貸し借りという
脱法的な複合的重層的赤字隠蔽工作をしていた。

こうしたことから普通会計は200億円近い金額となり、
「投資・出資金・貸付金」の項目が93億円という莫大な
数字になったようだ。

平成18年3月議会での補正予算をみると
このときの議会だけで4500万円近い一時借入金の利子が
計上されている。
平成16年度決算で55,217,000円、
平成15年度決算にも47,030,000円の一時借入金利子がある。

ただでさえお金がないのに
一時借入金の利子だけで毎年これだけの負担がのしかかっている。

「綱渡り」とか「自転車操業」とか表現されているけど、
もうこれは、ヤミ金地獄のスパイラルだ。

なんで夕張市は、こんなことになってしまったのか?
主要産業であった石炭産業から観光産業への転換をはかり、
テーマパーク「石炭の歴史村」を三セク方式で作り、
民間企業が撤退を決めたホテルやスキー場を買い取るなどした。

そもそも民間企業が黒字の見込みがないから撤退するホテルなどを
自治体が買い取るという全く先の見通しを考えない観光分野への
投資額は110億円にもなる。

無責任きわまりない。

(まだつづく)

■2006/07/02 (日) 自治体の倒産(4)

下記、毎日新聞記事を引用

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<破たん法制>導入へ制度見直し加速 総務省 (毎日新聞 - 06月25日 20:00)

 北海道夕張市が約600億円の負債を抱え、企業の破産にあたる財政再建団体の指定申請を表明したのを受け、総務省は自治体の「破たん法制」導入へ制度見直しを加速する。現在の法律は財政再建が手遅れになってから、自治体が国の管理の下で財政再建に取り組む制度で、法律上は破たんを未然に防ぐ手立てがない。総務省は、財政破たん寸前の自治体に警告する機能や、長期の負債もチェックする内容を盛り込んだ「破たん法制」導入を検討している。

 再建団体制度は、自治体の赤字額が一定規模を超えたら適用される仕組み。企業が、破産状態に陥って会社更生法の適用を受けるのと同じだ。

 しかし、金融機関から短期の借り入れを繰り返して単年度では黒字を続けていると、決算書上の借金は膨らまない。夕張市の場合も、このようなやり方で北海道による財政状況の把握が遅れた。

 竹中平蔵総務相の「地方分権21世紀ビジョン懇談会」は5月に分権改革の最終報告案をまとめ、その中で「再生型破たん法制」を今秋までに具体化させ、3年以内に導入することを提言した。

 同法は、第三者機関が財政危機に陥った自治体に事前に勧告し、未然に破たんを防ぐことを重視する。勧告しても改善しない場合は、再建手続きに入る2段階の手続きを想定。第三者機関は「隠れ借金」のような長期債務残高なども調査する。

 竹中総務相は「現在の制度を見直し、こういう(夕張市のような)事態になる前に早期警告の制度が必要だ」としている。【葛西大博】

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自治体が破綻する前に第三者機関がチェックして
未然に破綻を防ぐようにするという。

第三者機関とはどんな機関だ?
まぁ、それはそれとして、竹中さんに言いたい。

地方の借金もいいけど国と地方併せて800兆円近い借金のあるこの日本は、
一体誰がどう再建してくれるんだ?
http://members.at.infoseek.co.jp/Ichimuan/
(リアルタイム財政赤字カウンタ)

国債だけでも500兆円以上あるぞ!
生まれてきた赤ちゃんからお年寄りまで国民一人頭400万円以上だ。
誰が返済すんだこれ?

ムボーな夕張市長と機能不全の夕張市議会、
そして事務のプロとして失格な夕張市職員。
800兆円もの借金作っている内閣・国会議員・霞ヶ関も同じだ。
国にも第三者機関が必要か?

(まだまだつづく)

■2006/07/05 (水) 自治体の倒産(5)-a

下記、毎日新聞記事

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<夕張市>前年上回る夏のボーナス支給 財政再建団体で? (毎日新聞 - 07月01日 03:11)

 632億円の巨額負債を抱え、財政再建団体指定の申請を決めた北海道夕張市が、前年同期を上回る平均75万5000円の夏季期末勤勉手当(ボーナス)を職員に支給していたことが30日分かった。自治体が再建団体に転落するのは民間企業では倒産に当たるが、市幹部は「たまたま増えただけ。行財政正常化計画によって、年間を通じて支給されるボーナスは昨年を下回る」と説明、そこに危機意識は見られない。りそなグループや三菱自動車など経営危機にひんした民間企業では、ボーナス支給をやめる例は珍しくないが、同市の判断は果たして妥当なのか。【吉田競】

 同市職員の夏季ボーナスは6月8日に市職員労働組合(厚谷司委員長)と合意し、同15日に支給された。支給額は▽後藤健二市長163万3900円▽助役143万7000円▽市議70万4000円で、それぞれ前年同期を若干上回った。一般職員は平均で前年同期と比べ7000円増えた。同市の一般職員の期末手当は0.025カ月引き上げた国家公務員に準じており、今年度は夏2.125カ月(前年同期2.1カ月)、冬2.325カ月(同2.35カ月)を支給する。同市は04年度から基本給を3カ年で一律5%減額する行財政正常化計画を実施中で、夏冬合わせた期末手当では、平均158万1600円(前年度158万7700円)で、約6000円の減額となる。

 同市によると、支給額の引き下げには市条例の改正が必要だが、支給基準日の6月1日以前に改正しなければならないという。同市の給与担当者は「問題の表面化が急すぎた。市長や市議が返上を申し出た場合には公選法に抵触する」と話している。しかし、今年春には同市では事態の重大性を認識しており、事実上破たんしている財政状況について、国や道などに報告していた。

■2006/07/05 (水) 自治体の倒産(5)-b

こうした市の説明に市民は批判的だ。同市清水沢清陵町の強力道信さん(71)は「一般市民だけではなく、年金生活の我々にも市の無駄遣いのツケが回されようとしている時期に、市職員のボーナスが増えたことは納得出来ない」と、怒りをぶちまける。

 道の荒川裕生地域振興・計画局長は「抜本的な財政再建を行わなければならない状況について、もっと危機感を持ち考えていただく必要がある。庁内で危機意識を共有し、徹底した改革を進めてほしい」と語っている。

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倒産してもボーナスは増える。
放漫経営をしていている自治体も堅実な経営をしていている自治体も
国家公務員に準じて給与や期末手当が上下するのか?
そんなところばかりじゃないぞ!!

全くもって他人事である。
そこに自分の街だという認識は皆目見あたらない。
市議会議員の期末手当が70万円だという。

はぁ?人口13,000人の議員で70万円だとぉ!
以前、日記にも書いたけど清水町は、32,000人と倍以上いるけど529,200円だ。
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=321783&log=20030515
(これに共済特別掛金と所得税が控除され振込額が462,530円)

おかしいだろ?
おかしいのは月額報酬も同じだ。
夕張市議会議員の月額報酬は301,000円だ。
清水町は、245,000円。
(ちなみに、これに共済掛金、所得税など引かれて振込額は184,300円で、
さらにここから自分で住民税、国民健康保険税、国民年金など払うので
手元に残るのは15万円くらいだ。自分の大卒初任給より少ない。
住宅手当とかもちろんありません)

(もうちょっとつづく)

■2006/07/06 (木) 自治体の倒産(6)-a

夕張市はやっぱりどう考えてもおかしい。
私も日本全国いろんな市町村視察させていただいたけど、
どこも清水町より財政状況は大変厳しい。

改めて平成16年度の夕張市の財政状況と清水町を比べる。

○「経常収支比率」夕張市:116%  清水町:76.6%
 低いほうがいい、家庭言えばエンゲル係数みたいなもので、
 100%を超えているということは、給料以上の食費がかかっているようなもの

○「財政力指数」夕張市:0.22 清水町:0.99
 高いほうがいい、1を超えると不交付団体とよばれる。
 清水町は平成16年度から、
 国からの仕送りである普通交付税をもらわないことを
 前提に予算を組んでいる。

○「地方債残高」夕張市:137億円 清水町:81億円
 借金です。低いほうがもちろんいい。

○「公債費比率」夕張市:20.5% 清水町:10.6%
 低いほうがいい、借金返済の一般財源に占める割合、
 市で20%、町村で15%を超えるとやばいとされる

○「財政調整基金」夕張市:610万円 清水町:7億6千万円
 貯金で高いほうがもちろんいい。

■2006/07/06 (木) 自治体の倒産(6)-b

視察へ行くとどこでも言われる。
「清水町さんは、裕福な自治体でいいですね」って。

県東部ではまぁ、平均的な自治体だが、
北海道・東北・北関東・北陸・中国地方・
四国・九州・沖縄県の多くの市町村は、
どこも「ひ〜ひ〜」言っている。

そうした中でもやり繰りできるように必死になって行革を行い、
市長・議員の報酬削減、議員定数削減、職員給与や人員の削減など
コストカットには、自らの血も流している自治体もある。

1月に視察した沖縄県伊是名村、4月の兵庫県市川町のように
少ない予算でもなんとか健全にやっていこうと知恵を絞り、
身を切る想いもしている自治体も見てきているので
破綻しているのに期末手当アップしているような
無責任経営の自治体を知ると怒りすら禁じ得ない。

地方に限らず三大都市圏や東海道沿いの自治体であっても、
箱物行政など過剰な投資で首が回らなくなっている
市町村もある。

こうした見込み違いの放漫経営自治体、
無為無策の無責任自治体、赤字隠蔽悪徳自治体は、
いずれは財政再建団体に転落するかもしれない。

そもそも一時借入金288億円は極端な例かもしれないが、
一時借入金をするということは、予算の組み方が甘いと言える。

清水町は、ここ何年かは一時借入金をしたことはないという。
この額が多いところほど、無理なことをしている証拠だろう。

調達のあてのないカラ財源を予算に組み込んでいるような自治体もある。

市町村なんて昔は、同じくらいの規模の自治体ならば
どこもそんな変わらなかったかもしれない。
でも、これからは、住んでいる自治体によって
住民サービスの差がどんどん開いてくるだろう。

格差社会の時代は、自治体選別の時代でもある。
若い人が住みたくなる街、リタイヤした人が住みたくなる街、
逆に住みにくくなる街、企業や人口が流出していく街。

清水町は、もちろん倒産なんてしない。
清水町が倒産するときは、全国1800ある自治体の半分以上ダメポだろう。

首長・議員の責任がますます重くなる時代だ。
その重みを今回一段と感じた夕張市の倒産だった。

(おしまい)



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